病気や事故をはじめ、相手が不遇な状況にあるとき「かわいそう」という言葉を使うことがあると思います。
一見すると相手への思いやりに満ちた言葉に聞こえますが、状況や言い方次第では、上から目線で見下していると受け取られる可能性があります。
今回は「かわいそう」という言葉が上から目線になる理由、つい言葉にする人の心理、相手を傷つけないおすすめの言い換え例をご紹介します。
「かわいそう」が上から目線に思われる理由
自分が辛い状況にあるとき「かわいそう」と言われたらどう感じるでしょうか。おそらく多くの人は、不幸の烙印を押されたような嫌な気持ちになってしまうはずです。
国語辞書で「かわいそう」の意味を調べると「哀れで同情の気持ちが起こるさま」という説明があります。同情の気持ちは、相手が自分よりも不遇な立場にあるときに生まれやすく、無意識に相手との関係に優劣をつけています。
そのため、言った側が気づかないうちに、相手のことを怒らせたり傷つけている場合があります。
関係に優劣をつける=相手の心に寄り添った状態ではないので「自分はあなたとは違う」という、どこか突き放したニュアンスが含まれている点も、上から目線に思われる理由のひとつです。
「かわいそう」のそもそもの意味は?
実は「かわいそう」は「かわいい」と語源が一緒で、平安時代からある「おもはゆし=決まりが悪い、照れくさい」という言葉から派生しています。
漢字で表したときに「可愛そう」と書かれることがあるのは、このためです。現在の意味合いを考えると「可哀想」と表記するのが適切ですが「可愛そう」でも間違いではありません。
先ほどご紹介したように「かわいそう」には同情や哀れみの意味が含まれるので、安易に人に対して使うのは避けたい言葉ですが、小さい子どもが転んで泣いているときなど、同情ではなく共感の気持ちを表すために使うのであれば失礼にはあたりません。
そのときの状況や相手の立場、お互いの関係性を考慮しながら「かわいそう」を使うようにしましょう。
「かわいそう」と言う人の心理
「かわいそう」という言葉が上から目線となりやすいのは、その言葉を使う人の心理にも影響されます。
「かわいそう」と言う人の心理について考えます。
①視点が自分基準になっている
視点が自分基準の人は、相手の価値観を考えずに「かわいそう」と言ってしまいます。言われた方からすれば、上から目線に感じる可能性が高いです。
物事に対する価値観や判断基準は、人それぞれ違います。例えば「一人っ子はかわいそう」と言う人がいますが、実際に兄弟姉妹がいない人にとって、その状況が必ずしも不幸とは限りません。
哀れみや同情を意味する「かわいそう」という言葉を投げかけるのは、自分の物差しで物事を判断し、相手に価値観を押し付けているのと同じことになります。
②相手を哀れむ自分に満足する
口ぐせのように「かわいそう」と言う人の中には、世話焼きタイプも多くいます。助けを求められていないのにも関わらず「かわいそう」という言葉を使い、必要以上に世話を焼きたがるので、相手からは「余計なお世話」と思われることも少なくありません。
このタイプの場合、相手を助けたいという気持ちに嘘はないものの、自分は思いやりがあって優しい人間だ、と自己満足するために発言している可能性があります。
すなわち、無意識に「かわいそう」な境遇の人を、上から目線で見下している可能性があるのです。
③無意識にマウントを取っている
自分の優位性を相手に示す行為を「マウントを取る」と表現しますが、自分と相手を比べる形で「かわいそう」と言う人は、無意識のうちにマウントを取ることによって快感を得ています。
上から目線で「かわいそう」と言うことで、自分の方が上の立場だと証明している気になっている可能性もあります。
承認欲求や劣等感の強い人は、基本的にこちらのタイプに当てはまります。
【場面別】「かわいそう」の言い換え例
上から目線に思われないためには、同情ではなく共感の気持ちを表すことが大切です。つい「かわいそう」と言いたくなる場面別に、おすすめの言い換え例をご紹介します。
①同僚や部下が仕事でミスしたとき
自分が相手より目上の立場であっても、ビジネスの場で「かわいそう」を使うことは基本的にありません。
例えば、同僚や部下が仕事で失敗したときには「○○なんだね、辛いよね」と共感の姿勢で話を聞き、安易にアドバイスをするのは控えましょう。
解決策は本人から引き出すよう「あなたはどうしたら良いと思う?」と質問ベースで対話するのがおすすめです。
②友人から悩みの相談を受けたとき
友人から辛い出来事を打ち明けられるなどした場合、まずは相手の気持ちに寄り添い「大変だったね」「それは辛かったでしょう」といった言葉を投げかけましょう。
相談を受けた際に「かわいそう」という表現を使ってしまうと、友人は上から目線でものを言われているように感じ、心を閉ざしてしまうかもしれません。
また、落ち込んでいる相手に「頑張れ」という励ましの言葉や、「それは間違っている」など相手をジャッジするような言葉をかけるのはNGです。悩んでいる相手の気持ちを受け止めるような言葉をかけてあげてください。
「かわいそう」は上から目線になる可能性あり
大変な状況にある相手を思いやる気持ちは大切です。しかし「かわいそう」という言葉で表現した瞬間、自分と相手の間に見えない線を引いてしまい、上から目線でどこか他人事のようだ、と相手に感じられてしまう場合があります。
なるべく相手の心に寄り添うことを心がけ、前向きな気持ちになれるような言葉を意識して選んでいきましょう。