「これで大丈夫」という意味合いで使用する敬語や丁寧語はいくつかあり、「申し分ない」もそのうちのひとつです。
しかしこの言葉を使うと、場合によっては上から目線だと捉えられる可能性があることをご存じでしょうか。
知らないうちに上から目線となってしまわないよう、正しい意味や使い方を理解しておきましょう。
この記事では「申し分ない」の意味や上から目線になる可能性があるケース、言い換え例を紹介します。
「申し分ない」の本来の意味とは
「申し分ない」は、「指摘する箇所がないほど、完璧な状態である」という意味を持ちます。
つまり、不満な点や気が付いた点、改善が必要な点などがすべてなく、完璧な状態であると、相手に伝える際に使う言葉だということです。
また、非難すべき点もないという意味も含むことから、相手に対する誉め言葉として捉えることができるということですね。
「申し分ない」は上から目線になるのか
「申し分ない」を目上の人にそのまま使うと、上から目線と捉えられる可能性が高いです。
上司や親など目上の人何かをお願いし、その成果物に対して「申し分ない」を使用してしまうと、「成果物を自分が精査した結果、申し分ない出来である」という意味になります。
そのため、「申し分ない」が上から目線になる可能性高いシチュエーションと言えます。
たとえば、作家と編集者の関係を例に挙げてみると、目上の人に当るのは編集者で、作家は目下の人ということになります。
そして、執筆が完了した作品を編集者が精査し、問題が見つからなかった場合では、作家に対して「申し分ない出来でした」と伝えることになります。
反対に、編集者が校正した文章に対して、作家が「申し分ない校正結果です」と伝えてしまうと、編集者に対する作家の言葉が上から目線になってしまいます。
このように、「申し分ない」は使い方ひとつで上から目線になってしまうため、十分に注意して上で使用する必要があるでしょう。
「申し分ない」は敬語として使えない
「申し分ない」という言葉は誉め言葉として捉えることができますが、実は敬語でも丁寧語でもないため、敬語を使用する必要がある目上の人に対しては、あまり使うべきではありません。
それは、「申し分ない」という言葉を使用するシーンを想像してみると、容易に理解することができるでしょう。
「申し分ない」=「不満な点がない」として考えてみると、上司から部下、親から子供というように、目上の人が目下の人に何かを頼み、それに対する結果に不満な点がないという解釈になります。
反対に、部下から上司へ、子供から親に何かを頼んだ場合では、「お願いする」という形になるため、「申し分ない」ではなく、感謝の意を述べるのが一般的です。
「申し分ない」を目上の人に伝えるには
「申し分ない」=「不満な点がない」という意志を上司に伝えたい場合に別の言葉が見つからなかった場合には、ひとまず「申し分ございません」と、丁寧な言い回しで使いましょう。
「ない」を「ございません」に変えるだけで「申し分ない」のイメージが変わりますので、ぜひ参考にしてください。
なお、「申し分ない」に変わる敬語は次の章で紹介していますので、こちらもあわせて参考にしてくださいね。
「申し分ない」が上から目線にならない言い換え例
「申し分ない」という言葉は敬語でも丁寧語でもないため、目上の人にはなるべく使用しないほうが無難です。
こちらの章では、「申し分ない」が上から目線にならないよう、置き換えられる言葉を2種類紹介します。
ぜひ上手に使い分けてみてください。
ありがとうございます
上司や親に何かを頼んで成果物を受け取った場合には、感謝の意味を持つ「ありがとうございます」を使用しましょう。
「ありがとうございます」は丁寧語ですが、相手の労をねぎらい、感謝を伝えることができるため、目上の人に使ってもまったく失礼になることはありません。
お手数をおかけしました
「お手数をおかけしました」という言葉にも、相手の労をねぎらい、感謝を伝えるという意味があります。
この言葉は謙譲語にあたり、取引先の目上の人にも使えますので、ビジネスシーンで活用できる言葉として覚えておくと良いでしょう。
「申し分ない」は上から目線にならないよう言い換えるのがおすすめ
「申し分ない」という言葉は、誉め言葉として捉えることができますが、敬語や丁寧語ではないため、目上の人には使用しないほうが良いでしょう。
また、どうしても「申し分ない」という言葉を使用したいなら、「申し分ございません」と、丁寧な言い回しに変えて使用するように注意しましょう。
しかし、目上の人に使用するなら、やはり敬語、丁寧語、謙譲語が望ましいと考えられます。
この記事で紹介した「ありがとうございます」「お手数をおかけしました」という丁寧語と謙譲語を知っておき、「申し分ない」の言い換えとして上手に活用してくださいね。