「粛々(しゅくしゅく)と」は、政治の場や会議など、固い場面でよく使われる言葉です。テレビのニュースで「本案件につきましては、粛々と進めて参ります」など、聞いたことはありませんか?
今回は「粛々と」が上から目線の言葉になるのか、また目上の人に使う言葉としては適切なのかをお話ししていきます。
かつて「粛々と」が問題になった出来事も合わせてご紹介しますよ。「粛々と」が上から目線の言葉になるのか、言い換えると何になるのか知りたい方はぜひご覧ください。
「粛々(しゅくしゅく)」の意味は?
「粛々(しゅくしゅく)」の意味は、次の3つです。
- ひっそりと静まっているさま。
- おごそかなさま。厳粛なさま。威厳をもって物事を行うさま。
- つつしみうやまうさま。
引用:weblio辞書
「粛々」は、静かなさまや厳かなさまを表しています。
粛々を応用した「粛々と進める」には、物事を淡々とこなしていくという意味もありますよ。政治家などがいう「粛々と進めて参ります」には、物事を着実に対応していくといった意味が含まれています。
「粛々と」はどのようなときに使う?
「粛々と」は、日常生活ではあまり使いません。政治の答弁や会見など公的な場で使われる言葉です。いくつか具体的な例をご紹介します。
- (会見の場で責任者が)粛々と対応して参ります。
- (会議で部長が)Aくんの案件については粛々と対応するように。
上記の「粛々と」の意味には「厳粛に」や「心を引き締める」という意味があります。「粛々と」という言葉を使うと、ある物事に対して厳正に対応していきますといった意思表明になりますよ。
「粛々と」は上から目線の言葉ではないが注意が必要
結論からいうと、「粛々と」は上から目線の言葉ではありません。しかし、使用するには注意が必要です。
2015年の沖縄の、普天間基地の辺野古移設問題の際に、当時の菅義偉官房長官が「粛々と」という言葉を使って非難を浴びています。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古沖(同県名護市)移設に反対している普天間周辺住民らが2015年4月3日、4~5日の日程で沖縄県を訪問する菅義偉官房長官について、「『粛々と進める』と言うだけの思考停止に陥っている」などと非難する声明を発表した。
引用:辺野古移転「粛々と進める」菅官房長官 翁長知事との深い溝「1回で埋まるような話ではない」JCASTニュース
当時の沖縄県知事の翁長氏も「上から目線に映った」と発言していました。
「粛々と進める」には、「厳粛に」や「心を引き締める」という意味があります。その意味だけでは問題はないように思えますよね。
このケースでは、「粛々と進める」と発言した状況が問題でした。沖縄の住民たちは「基地の移設反対」だと声をあげているのに対し、菅氏は「粛々と進めていく」と発言しています。
菅氏は「心を引き締めて対応していく」という意味で発言したのだと思いますが、その言葉だけ聞くと「反対意見を聞き入れずに押し進めるということか!」と感じてしまいますよね。「粛々と」は時に注意が必要な言葉です。
「粛々と」が上から目線に感じる心理
「粛々と」が上から目線に感じるのはどういうことでしょうか。
先ほどお話した通り、「粛々と」自体には上から目線の意味はありません。上から目線になり得るのは、そのときの状況によります。
ひとつの問題があり、いろいろな意見があって揉めているときに当事者が「粛々と」を使用するのは、辺野古の問題と同様に非難を浴びる可能性がありますよ。
意見に反対している人たちからすれば、「粛々と進めていく」という言葉は「あの人は反対意見を聞き入れずに物事を押し進めていくのだ」と捉えられるのです。時に上から目線にも映る「粛々と」は使用するのに注意が必要ですね。
「粛々と」を言い換えるならどのような言葉がある?
「粛々と」が時に上から目線にも捉えられるというお話をしました。では、どのように言い換えると勘違いがおきないのでしょうか。次のように言い換えることをオススメします。
- ひっそりと
- 厳粛に
- 心を引き締めて
使用する状況によって、言葉を選んで発言しましょうね。「その件につきましては、心を引き締めて対応して参ります」といえば、上から目線には思われないでしょう。
「粛々と」は使い方によっては上から目線になり得る言葉
「粛々と」自体には上から目線の意味はありません。しかし、使用する状況によっては上から目線に捉えられてしまう恐れがあります。
自分では上から目線で発言したつもりがなくても、相手から「失礼な人だな」と思われるのは嫌ですよね。
「粛々と」は時にマイナスイメージになります。あなたが発言で追及されるのを避けたい場合は、できるだけ違う言葉を使うようにした方がよいでしょう。相手に失礼な発言をしないように気をつけたいですね。